JISで保証されてるネジの各種数値

一つ前の記事の続き物です。気力が続けば後2~3個くらい記事続きます。

 

JISで定められていることはネジの寸法から強度・耐久度まで多岐にわたります。
その中でも今回は寸法や強度よりも更にもう一歩手前の応力の話です。
呼び径など寸法が決まれば次は強度[N/mm2]でなく強度[N]が導出できます。

まず、今回書く内容の中で疲れ強度に関しては何も考えていません。
当然考慮しないといけない項目なのでいずれ書きます。たぶん。


鋼製ネジであればそれぞれに「呼び」の値があって、実際に導出された数値から安全方向で近い整数を用意してありますので、計算にこの呼び値を使うと安全率を幾らか取ることになります。
この安全率という概念が割と厄介で、何かを決めようとする度に顔を出してきます。
総合して見たときに安全率を大きく取っているに越したことは無いのですが、毎度大きく安全率を取っていると積み重なりが無視できません。
どこでどのタイミングで安全率を加算していってるのかをメモしておくと後で安心できますのでオススメです。

JISで保証されている内容のうちネジに関して注目するのは引張強さと下降伏点(or耐力…0.2%永久伸びを生ずるであろうと言う点の荷重応力)です。(衝撃強さ(J)に注目する場面もあるかもしれません。)
というのも、一つ前の記事で書いたようにネジ選定に必要な強度は軸方向とせん断方向の2つで、
軸方向は耐力ですし、せん断方向の強度は引張強さに比例するといわれています。
軸方向に関しても厳密には耐力よりも保証荷重応力を採用すべきでしょう。
ただしJISでは鋼製ネジの保証荷重応力の規定ありますがアルミなどは付属書での記載に留まっています。
せん断強度は引張強さの60~80%という数値を見かけるんですが出所がよく分かりません。
が、この説を採用してかつ安全方向に余裕もって引張強さx0.6と考えましょう。
材料力学的な根拠があるんでしょう…たぶん…

せっかく規格化され入手性がよいという特性のあるネジを使うのに、形状や材質が特殊すぎるネジを使っていては有利性が損なわれてしまいます。
おおよそ、入手製のよいネジの材質としては鉄/ステンレス/アルミの3種に大別できると思います。
チタンと黄銅もたまに登場してきます。黄銅に関しては雄ネジのついたスペーサを使うときなんかに計算しないといけないかもしれません。

 今はJISの番号を入力すれば照会はできるのでJIS規格番号も添えておきます。
印刷や引用はダメというか手間かかりますので各自で何とかしましょう。
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html

JIS B 1051では鋼製ネジの機械的性質がまとめられています。
おそらく最も流通しているであろうネジですが、
他の種のネジの規格と比較してルールが異なっている(強度区分であったり呼び耐力があったり)ので混乱しやすい気がします。
逆に、こちらに慣れてる人はステンレスやアルミのネジの扱いに慣れないんじゃないでしょうか。
S45Cは強度区分8.8に割り当てられている商品を見かけますね。
クロモリ鋼のSCM435は10.9あたりで見かけます。
この強度区分はただの一つの小数値というわけでなく、左側が引張強さ、右側が引張強さにかけると下降伏点となる数値を示しています。
8.8であれば引張強度は800[N/mm2]下降伏点は800*0.8=640[N/mm2]となります。
10.9であれば引張強度は1000[N/mm2]下降伏点は1000*0.9=900[N/mm2]となります。
また鋼製ネジには保証荷重応力という値も保証されております。
「引張試験にて求めた降伏点又は耐力の 88%~94%に設定された荷重(保証荷重応力比)の値でありその荷重をボルト、小ねじにかけ 15 秒間保持し永久伸びが生じてはならない点の応力。」
ということらしいですが、気をつけないといけないのがこれは耐力に保証荷重応力比を加えたものであって呼び耐力に対してではないんですよね。
呼び耐力に応力比をかけても安全側になる(≒小さな値となる)ので問題ないのですが。

JIS B 1054ではステンレス製ネジの機械的性質がまとめられています。
こちらには鋼種区分という概念があり、オーステナイト系はA1~A5あります。
A1(SUS303)、A2(SUS304)、A4(SUS316)なんかが材料としてもよく見る感じでしょうか。
加えて、強度区分として50(軟質)70(冷間加工)80(冷間強加工)の3種類あるのですが
要するにA1-50だろうがA4-50だろうがJISで保証されている引張強度と耐力は変わらないということです。

JIS B 1057ではアルミ含む非鉄製ネジの機械的性質がまとめられています。
アルミは鉄系ネジと異なって、ネジの呼び径によって各種強度が異なるので注意が必要です。

材料区別の記号/合金番号/一般に流通してる形状/一般名称
AL1 / A5052 / 丸棒、板材
AL2 / A5056 / 丸棒
AL3 / A6061 / 丸棒、板材
AL4 / A2024 / 丸棒(板材) / 超ジュラルミン
AL5 / A7N01 / - / (溶接構造用)
AL6 / A7075 / 丸棒、板材 / 超ヶジュラルミン

AL3は同じAlMgSi系として、A6061よりも強度が低く耐食性・表面処理性が良い、押出成型品(角棒など)としてよく見るA6063があります
AL4は同じAlCu系として、A2024よりも強度が低く切削加工性も悪いですけど板材のあるA2017(ジュラルミン)があります。
A2024は板材の流通量が少ないという記載をネット探してると見かけましたがmisumiでも取り扱っているみたいですね。
AL5のA7N01も流通が少ないらしいです

この時、A6061とA6063、A2017とA2024など似たような素材だからといっても強度やらなんやら違うみたいだし、
タップ加工が施された穴側でも上記の応力の強度値が使えるのかはきちんと精査しないといけません。

次に続きます。

 


強度区分
https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_kyoudo.html

鋼製ねじの機械的性質 ネジのオンラインショップ山崎
https://www.ymzcorp.co.jp/ym11/kyoudo.html
ステンレス製ねじの機械的性質 ネジのオンラインショップ山崎
https://www.ymzcorp.co.jp/ym11/suskyoudo.html